[ISO]ISO22000の概要と規格理解のポイント(要点抜粋)

 06年4月19日食品安全ネットワーク(会長近畿大学農学部教授米虫節夫)10周年講演会「ISO22000の明日を語る」で現在日本のISO22000部門の先端で、実務に携わっておれれる湯川剛一郎、小久保 彌太郎、大西吉久3人の方が講演された。
講演内容を3回に分け食品と科学にリポートした。
第1回目の内容が食品と科学7月号に「リポート「ISO22000の明日と語る1.」食品安全ネットワークという表題で83頁から91頁まで、表4枚を添付して発表されている。リポートは表を別に1万字を超え、大事なところは全て記載した。
食品企業経営者、幹部の皆さんにはぜひ聴いて欲しい講演だったので、詳細を食品と科学にリポートした、ぜひ、お読みいただき、自己企業の点検をしていただきたい。
以下、ポイントを抜粋して内容をご紹介する。
(食品と科学社℡03-3291-2081FAX03-3233-0478)

ISO22000の概要と規格理解のポイント(要点抜粋)

講演者 独立行政法人農林水産消費技術センター理事湯川 剛一郎氏
技術士・農業(食品化学)部門及び総合技術監理部門)
農林水産消費技術センターがISO22000の国内・国外窓口
 農林水産消費技術センターは5年前に農林水産省から分離され、独立行政法人として仕事をすることになった。
ISO22000への取り組み体制はISO22000の検討のため農林水産消費技術センター内に設置している国内検討委員会には、農林水産省厚生労働省から推薦された専門家が参加し、両省及び経済産業省からは担当官がオブザーバーとして参画している。

なぜISO22000が必要なのか

 2001年3月TC34のPメンバーであるデンマークから新規作業項目提案(NWIP)が行われた。
 提案の内容は「食品産業の食品リスクへの対応は、HACCPを通じて行われるべきである。」というものである。
ISO22000の情報が国内に流れた当初「食品の衛生管理は22000で!」「いやHACCPで!」といった論議が交わされていたが、これで、ISO22000はHACCPそのものであることが明確になり、決着はついたと言える。
 HACCPシステム再検討提案の理由は、
① HACCPシステムに基づくガイドラインを作成している国もあるが、国際貿易の場では、国家規格だけでは不十分である。
② 流通業者は自身の基準で食品の生産者を検査している。このため、生産者は国や顧客により中身の異なった要求事項に対応しなければならなくなっている。
③ このように、ばらばらである現状を是正し、正しいHACCP原則の使用、手順に基づいたHACCPの監査と計画を実現し、HACCPシステムに基づいたマネジメントシステムを確立するためには、新たな国際規格が必要である。

ISO22000の概要
 5.1の序文でISO22000では、「フードチェーンすべての組織」を対象にしていると述べている。
 特に重視していることは、次の四点である。
① 相互コミュニケーション。
② システムのマネジメント。
③ 前提条件プログラム。
④ HACCP原則の要素を組み合わせた食品安全マネジメントシステム(FSMS)の要求事項を規定。
ISO22000は、食品企業が法令・規則によって求められている食品安全のための基準(その多くはPRPにふくまれている)が、守られていることを前提に、更に焦点を絞った、一貫性のある、統合されたFSMSを求める組織への適用を意図したものである。
ISO22000は、食品企業が食品安全マネジメントシステムを確立してもらうためのマニュアルであり、単に、認証取得のためのチェックリストではない。

食品安全ハザード 
 
健康への悪影響をもたらす可能性がある、食品の生物的、化学的又は物理的物質又はその状態。
 「ハザード」は、疾病や事故などの危害の原因となるもので、この危害がどのような頻度で起き、どのような被害を及ぼすかが「リスク」である。
ISO22000では、リスクという言葉は使われていない。
また、「食品安全ハザード」という言葉は22000のみに使われている。

前提条件プログラム(PRP

  人間による消費にとって安全な最終製品及び安全な食品の生産、取扱い及び提供に適切なフードチェーンの衛生環境を維持するために必要な基本条件及び活動。
 HACCPでは、PPと表現されているが最近ではPRPと略されることが多い。
オペレーションPRP(OPRP)
  食品安全ハザードの、製品若しくは加工環境への混入、又は製品若しくは加工環境における食品安全ハザードの汚染若しくは増加の可能性を管理するために不可欠なものとしてハザード分析によって明確にされたPRP。

重要管理点(CCP)

 管理が可能で、かつ、食品安全ハザードを予防若しくは除去又はそれを許容水準まで低減するために不可欠な段階。
オペレーションPRP(OPRP)と重要管理点(CCP)の違い
食品安全ハザードの汚染もしくは増加の可能性を管理するために不可欠なものという点では、OPRPもCCPも似ている。
では、どこが違うのか。OPRPの場合「管理するために・・明確にされたPRP」と規定されているのに対しCCPは「管理が可能で・・不可欠な段階」と規定されている。
 「管理が可能」で、ということは、機械や人が見張っていて、問題が生じたら、その問題のある製品を即座にフードチェーンから除外できるようなことである。

5.6 経営者の責任(規格第5章)

経営者のコミットメントについて、ISO9001では顧客要求事項を強調している。
ISO22000では顧客要求事項よりも、この規格による要求事項及び法令・規制要求事項を強調し、さらに、食品安全方針(§5.2)に、コミュニケーションに関する事項を盛り込むことが要求されている。
フードチェーン全体に食品安全に関する問題の十分な情報が伝わることを目的とした外部コミュニケーション(§5.6.1)、及び内部コミュニケーション(§5.6.2)についても要求事項がまとめられており、この事項は、明文化が必要と考えられる。

6. 規格理解のための留意点
6.1 HACCPプランとオペレーションPRP/SSOP の違いを事例で考える

例1
飲食店でお客様に出すお茶のポットに、殺菌した際の洗浄不良による漂白剤が混入し、苦情が発生した。ハザード分析の結果、以下の管理を行うこととした。
▼HACCPプランによる場合
是正処置として,お客様に出す前に責任者がお茶の味見をし、臭い・味が異常なら中身を捨てることとした。
▼オペレーションPRPによる場合
その後,洗浄/殺菌の手順を確立した。
ポットを洗った後に臭いをかいで塩素臭くなければ○、×ならポットを洗い直すこととした。
 つまり、HACCPプランではお茶そのものを管理し、OPRPでは、ポットの検査を行うことで、製品であるお茶の管理とは別に安全管理を行おうということである。
 ((財)日本食品分析センター荒木氏作例)

例2
手指を介する病原微生物による汚染が非常に重要であり、管理が必要な場合

SSOP(衛生標準作業手順)による管理の場合
衛生管理担当者は実施状況を定期的に点検し、その記録を付ける。SSOPに規定された手洗いが遵守されていないことが明らかになった場合は、従事者に対する衛生教育の強化、また手洗いを規定どおり行わなかった従事者には、即刻手洗いを指導する「改善措置」が講じられる。
それでもなお、手指を介する病原微生物による汚染を原因とした食中毒またはそれにつながる事故がもし仮に発生した場合には、CCPとして管理せざるを得なくなる。

CCPによる管理の場合従事者の製造室への出入り口に専任の者を配置し、従事者全体の出入り時の手洗い実施方法について作業時間中、常時観察し、一人でも手洗いを怠った従事者を発見した場合は、当該従事者をラインからはずすとともに、その者が直接接触した食品を同定、保留し、廃棄する等の改善措置を講じる。

おわりに
この規格は、認証を取得した組織の作る食品が絶対安全であることを保証するものではない。
この規格は、システムの失敗が起こりにくい組織づくりを目指している。
また、万一、安全でない恐れのある食品を市場に流通させてしまったとしても、すぐ回収を行える体制が整っており、原因究明が的確に行われ、再発防止策が講じられるような〜転びにくく、転んでも、すぐ立ち上がれる〜組織を目指している。
ISO22000への適合性を説明しようとする場合には、文書化手順、記録の有無といった要求事項への適合性の確認のほか、ハザード分析から管理手段の選択、組合せの決定に至る一連の検討過程を合理的に説明できることが求められる。
つまり、自分が行っている管理手段が正しいのかどうか、説明できることが求められている。(リポート猫西 一也)

ISO22000:2005 食品安全マネジメントシステム要求事項の解説 (Management System ISO SERIES)

ISO22000:2005 食品安全マネジメントシステム要求事項の解説 (Management System ISO SERIES)