[労災」]硫化水素中毒
12月30日の朝日新聞朝刊の第1面に「秋田・泥湯温泉」「ガス中毒?母子3人死亡」「父重体、雪穴に硫化水素」という見出しで、泥湯温泉の宿泊客の家族4人が、源泉から噴出した湯でできていた雪穴に入り、空洞内に滞留していた硫化水素ガスで中毒死し、助けに入った父親も重体と報じている。
母親と子供二人が、駐車場で円盤遊びをしている時、円盤が雪の空洞に入ったので、兄弟のうちの一人が取りに入ったのだが空洞から出てこないので、母親が様子を見に入った、母親も出てこないので、もう一人の男の子も様子を見に空洞に入った。
家族が帰ってこないので心配した父親と旅館の従業員が探しに出、3人が空洞の中で倒れているのを父親が見つけ、助けに入ったのだが、父親も倒れた。
4人は救急車で病院へ運ばれたのだが、母親と子供二人は死亡、父親は重体。(NHKの夜のニュースで父親も死亡したことが報じられた。)
また、新聞は、「この空洞付近ではウサギなどが倒れていることもあったといい、地元ではガスが濃い場所として知られていた。救助隊が駆けつけた際、空洞内は125ppmまで計測できる硫化水素計測器の針が振り切れるほどガスの濃かった。」と報じている。
食品工場で硫化水素中毒
温泉地に限らず、身近な食品製造現場でも硫化水素中毒が起きているので、注意が必要である。
フィシュミール工場における硫化水素中毒 「フィシュミール製造過程では、原料貯蔵タンクから魚の汁や、魚を洗浄した汚水が出る、これらは側溝を通って汚水ピットに流れ込むようになっている。
災害の発生状況は
「工場長と作業者Aの二人が工場内で仕事をしていたが、工場長の呼びかけにAが応答しないので、探したところ、通常開いていない汚水ピットの蓋が開いていて、脚立梯子が下ろされているので不審に思い、確認したところ、Aが汚水ピットの内部で倒れているのを発見した。」というもので「消防署がAを救出する前に汚水ピット内部の硫化水素濃度を測定したら、125ppmを超えていた」というものである。」
原因としては、
1.酸素欠乏危険作業主任を選定しておらず、安全衛生管理体制がきわめて不十分であっ たこと。
2.労働者に硫化水素に関する安全衛生教育を実施していなかった。
3.硫化水素発生のおそれがある箇所に立ち入り禁止の表示を行なっていなかった。
4.空気呼吸器などの保護具を備え付けていなかった。」
が、あげられている。
(中央労働災害防止協会HP・安全衛生情報センター災害事例から引用)
関連資料
食品と科学社(TEL03-3291-2081 FAX03-3233-0478)から発行されている月刊誌「食品と科学」の05年9月号から06年1月号まで「食の安全の前に人の安全」というテーマで、9月号では食品工場の火傷事例、路上駐車ガスポンベ運搬車の爆発事例。10月号では、酸欠事故事例。11月号、12月号では塩素ガス中毒事例。06年1月号では一酸化炭素中毒事例について、発生経過、原因の石川ダイアグラムによる要因分析、対策提案記事が発表されている。
また、この記事を読んだ食品工場の責任者の方が、「早速『食の安全は、安全な作業から!」』といいう標語を掲げ作業をしています」というお声も聞いている。(猫西一也)