[コミュニケーション]食品企業の情報公開
2005年12月21日 【 FOOD ・ SCIENCE / NEWS 】 Vol. 122
◆消費者は食品企業からの直接、迅速、正直な情報を求めています
これまでも食品安全に携わる人たちへ貴重な提言をしている日経BP社 バイオセンターFOOD・SCIENCEサイトの中野栄子氏は、今年の締めくくりとして、表題について下記のように提言している。
要約しようとしたが、一語一語が貴重であり、真意を理解するには全文引用が必要と考えた。
企業が、消費者に理解と信頼を得たいと考える時、情報提供は、「直接に、迅速に、正直に」は欠けてはならない、要件であろう。
また、中野氏は、消費者は「情報の受け取り方や理解の仕方についても進化しているという考察をしている、これも「食の安全・安心ブランド調査2006」というデータを基に実証的で提言に重みを添えている。
食品企業も、消費者進化に対応できなければ、容赦なく捨てられであろう。
ISO22000は、HACCPを進化させた内容を持っている。
食品安全チームとリーダーの位置づけ、活動だけでも取り入れれば、衛生管理に一本筋が通るはずである。進化に躊躇は無用であろう。
記
「今週、2年ぶりに米国産牛肉が日本に戻ってきました。これについて、「(国民の反対を押して)とうとう輸入が再開されてしまいました」と報じる一部巨大メディアと、冷静に歓迎の意を表明する外食業界。日本の反応はさまざまですが、食の安全問題から日米政治問題へと発展し、やっと決着した今回の件について、これをお読みの読者の方は、米国産牛肉の安全性そのものよりも、消費者とどう向き合って
いったらよいのか、どう対処していけばよいのかについて、関心がシフトしてきているのではないでしょうか。
振り返ってみれば、国民の食に対する不審感は、食のサプライヤーからの不適切な情報提供が原因となっている例が多かったと感じます。ネガティブな情報それ自体よりも、その伝え方がまずいばかりに、コトが大きくなってきています。不祥事を発表する時期とその内容がまずく、迷った挙句に発表の仕方1つ間違えればドツボにはまるという構図です。
したがってここから得られた教訓は、不祥事やネガティブなことも、できるだけ多く情報公開すべきであるということになるでしょう。例えば過去にさかのぼって、「実はこういうことがあったけど、これは不適切な対応でした。今後はこのようにしていきます」と誠意を見せることだと思います。
とはいえ、なかなかそうはできない心情というのも分かります。過去のある事件で、その時はベストの判断をした結果、発表しなかったものが、今は同じことでも発表するとなったとき、「一貫性のなさ」に後ろめたさを感じてしまうこともあるでしょう。特に科学的な評価の結果、当時はある判断をしたとしても、今は科学の進歩により当時の評価結果を否定しなければならないことも生じます。食品分析な
どは、検出感度が上がれば上がるほど、当時は不検出で「安全」だったものが、今は検出されるために「危険」と、一般消費者にとって一貫性のなさばかりが目に映ります。
ただし、これも食品検査とはどういうものか、検査の意味、不検出の意味といったことを丁寧に情報発信し続けるしかないように思います。いつまでも、「寝た子を起こさないように」という姿勢をとっていては、後々そういう姿勢が不誠実であると一般消費者に映るのです。
一方で、消費者の人たちは、それまでよりも企業の発信する情報に耳を傾けよう
という姿勢を見せています。先週ご案内した「食の安全・安心ブランド調査2006」でも、その傾向が昨年よりも強くなっていることが明らかになりました。ニュースで報道された情報への過敏な反応が影を潜めたのです。情報ソースである企業の情報や、それを説明する研究者の情報を、きちんと探して、自分なりに納得したいというものです。
そんな消費者が求めるのは、企業からの直接で迅速、正直な情報だ
ということも浮かび上がってきました。
来年になっても恐らく、BSE(牛海綿状脳症)を巡る米国産の牛肉是非の論議は続くでしょう。ただ、上述したように消費者の情報収集の姿勢も進化していますので、そうした消費者へ適切な情報提供をしていくことが食品企業の信頼性構築につながることは間違いないようです。これからのリスクコミュニケーションのキーワードは「企業からの直接、迅速、正直な情報提供」であると、提言させていただきます。」
(以下略)
FOOD・SCIENCEサイト 中野栄子 food-sc@nikkeibp.co.jp
(猫西一也)