(23)QC/TQCが基本

食品と科学社(?03-3291-2081fax03-3233-0478)から刊行されている月刊「食品と科学」1月号に連載中のエグゼクティブ(経営幹部)への手紙(23 )「 基本はQC/TQM 」の内容をご紹介します。

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2008年11月15日大阪市中央会館第一会議室で行われた第35回”米虫塾“ISO22000研究会  で、主宰者の米虫節夫近畿大学農学部教授が、「最近気になるのは、HACCPについて執筆・企業の指導・企業内でシステムの推進などの仕事をしている人の中に、QCやTQCのことを知らない人がいることである。
歴史的に見てもISOやHACCPシステムは、長年にわたるQC・TQC活動という基礎の上に構築されたものであることを知る必要がある。
このことを知らないままにISOやHACCPの仕事に携わっていると、間違った判断や指導をすることになる。」と前置きされ、1999年に行った日科技連BCコース実施法コースで使用した教材(パワーポイント80駒)を使って一時間余にわたり解説をして下さいました。

品質管理の歴史と発展(要旨・一部分)

「1913年フォードがベルトコンベア方式で自動車生産を始めたことで統計的管理手法が生まれ。第二次世界大戦中にアメリカ軍が納入検査に統計的抜き取り検査を採用し、品質管理に関する規格制定と教育を行ったことで品質管理手法が普及した。
1944年に創刊された雑誌Industrial Quality Controlは、学会の機関誌ともなり、英国も1935年に品質管理手法を取り入れた。
日本では「1946年に「規格と標準」(現在の「標準化と品質管理」誌)が発刊され、1950年代前半にアメリカからQC手法を学び、後半にはTQCを目標にQCの組織化と現場監督者教育が行われ、‘60年代にはQCサークル活動が活発化し、日本的品質管理活動が確立された。 ‘71年には「日本品質管理学会」が創設され、70年代は品質機能の展開、設計審査、N7などの新しい手法も開発される年となり、80年代にはQCブームが起き、多くの企業に展開した。
この活動はアメリカにも影響を与え、アメリカ企業が日本方式で品質管理を始めだし、英国では「ISO規格」に発展した。
日本の品質管理活動は品質「管理」から品質「改善」活動に、ループ(輪)型から脱皮し、QC七つ道具や実験計画法、方針管理、QCサークル活動を取り入れ、常にPDCAサイクルを回して向上発展するスパイラル(らせん)型に発展した。

日本型品質管理活動の特徴

1. 全社的品質管理である。
2. 教育を重視している。
3. 統計的方法を重視し事実把握に努めている。
4. QCサークル活動がある。
5. 次工程はお客様と考える。
6. 経営者の理解と熱意がある。
7. 民間主導である。」

次工程はお客様と考える

 1993年11月大阪で行われたHACCPセミナーで教えられたことは、「最終製品の抜き取り検査に依存するのではなく、工程管理で製品の品質保証を行う新しいシステム」ということでしたので、職場に立ち上げていたTQC研究会にHACCPも加え、並行して勉強することにしました、ところが「工程管理で製品の品質保証を行うこと」はすでにTQCで「次工程はお客様として考える」として行われていることをQC解説書  で知りました。
解説書には「あと行程はお客様:それぞれの工程があとの工程をお客様と考えて、あとの工程が満足する一級ものだけを作り出して送るようにしたらどうでしょう。
これをずっと続けていけば最終には良いものだけができるはずです。
あとの工程をお客様と考えると、ここでもデミングサークル(PDCA)が回ります。あとの工程は、自分の工程に何を望んでいるか、それをあとの工程と話合いながら調べ、その要求を実現するためにすべきことを考え、あとの工程から苦情のないよう改善を実行していく。
もし、自分の工程に送られてきたものに不具合があった場合は、しかたがないとあきらめず、前の工程に不具合をしらせることが大切です。
社内にはお客様がいっぱい:購買部門では、部品、材料を使う製造部門がお客様。経理部門では、経理データを活用して経営を考え、管理を進めるところがお客様。伝票の形式を考える仕事では、伝票を使うところがお客様。電話交換をする人のお客様は電話を取り次ぐ人。」という内容。
 研究会のメンバーも『現場の血が通っている』と共感し、『これでいこう』になりました。

tyle="font-weight:bold;">ISO22000+ISO9000=ISO31000で

 ISO22000研究会で、HACCPの改良版であるISO22000の英文案を検討した際、米虫教授は「購買と商品設計が欠けている、品質管理を万全なものとするためには、ISO9000と組み合わせた“ISO31000”で実施する必要がある」と強調されました。
 次の工程はお客様の考え方で購買方式を決め、実施していたら偽装米をつかまされて大量の商品を回収廃棄することは防げたでしょうし、同様に商品設計を行っていたら、中身と表示の食い違い、表示の不備などで商品回収を行うことも防げたように思います。

ホテルで「次の工程はお客様」が

元ザ・リッツカールトン大阪営業統括支配人の林田正光氏は「リッツカールトンでは、従業員をホテル内部のお客様と考えています。マネージャーは従業員に敬意を払い、どんな小さな声にも耳を傾け支援します。
そうゆう環境が整えば従業員は外部のお客様に対しても前向きにおもてなしができるようになります。
従業員が自分の意見を聞いてもらえなかったり、一人の人間として敬意をこめた態度で接してもらえなかったら、前向きな気持ちで仕事をすることはできないでしょう。
この時代従業員を召使扱いしたら働く意欲は失われます。」と著書 に書き、さらに「お客様には「愛のある心くばり」をすることが必要で、「気配り」は、まちがいや失敗のないよう細かいところまで注意を行き届かせることで最低限やるべきことにすぎない。「心くばり」は、相手の心情を十分に考慮し、予測される事態に対し、万全の対応をすること。」とも述べています。

あと行程はお客様」も心配りで 
                                          
 TQCの「あと行程はお客様」も「愛のある心くばり」で行われたら、すばらしいことになるように思います。

                      猫西一也
                                                   

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出版元:食品と科学社〒101-0054東京都千代田区神田錦町3-6-4-1201
(03-3291-2081 FAX03-3233-0478)

食品と科学社内食品工場交流会事務局電話(03-3291-2081)では食品工場交流会の会員を募集しています。
登録は無料です。
登録を希望される方は、1.社名 2.事業所名、3.所在地、4.担当者の部署、氏名、連絡先、5.主な製造品目をFAXでお知らせください。
コーディネーターは、大手飲料メーカーで工場長を務められ、現在食品と科学に「ディズニーランドのような工場にしたい」を連載中の水上喜久氏です。

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御質問や御意見は、下記アドレスへ 
kagaku-syokuhin@memoad.jp

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リンク 食品安全ネットワークHP 
http://www.fu-san.jp/