三者三論―米牛肉輸入再開へ課題は
表記の課題を掲げ、朝日新聞が2006年3月3日のオピニオン欄で民主党「次の内閣」農水相山田正彦、ビデオジャーナリスト神保哲生、全米肉牛生産者協会(NCBA)会長マイケル・ジョン3氏の意見を掲載した。
山田氏は「BSEの感染拡大防止は、全頭検査、危険部位除去、固体識別、飼料規制が四本柱だ。米農務省はこれらの実施には一貫して消極的だ。」「韓国のように、自ら査察して承認した施設からだけ輸入する。これが輸入再開の最低限の条件ではないだろうか。」「カナダやメキシコを経由した迂回輸出も考え、規制やリスク評価をすべきである。」と述べ。
神保氏は、「米国の牛肉の安全性に懸念があるのは、飼料規制と、特定危険部位(SRM)の除去が徹底されていない可能性が高いからだ。」「米国では今も牛の肉骨粉を豚や鶏の飼料に使うことが認められている。」「これらの飼料が牛の飼料に混入する、交差汚染のリスクが排除できない」「大手食肉工場では、SRMの除去がかなりずさんと指摘されている。」と問題を提起し、「政府の責任で飼料規制とSRMの除去を担保することが不可欠で、その上で情報公開を徹底し、消費者に選択肢を示すべきだ。」と提言している。
マイケル・ジョン氏の「再び同じ過ちが絶対に起きないように検査官の再訓練や増員をした」「米国牛肉の安全性に対する信頼を回復してもらうには十分な対策だと確信している。」という説明は、残念ながら説得性に欠けているだけでなく、アメリカ議会の圧力をちらつかせるなど、むしろ、日本の消費者の失望を増大させていることに、マイケル・ジョン氏は気がついてほしい。
日本が抱える問題も大きい、もし、日本がアメリカにおける飼料規制とSRM除去を自ら査察し、承認した施設からだけ輸入を認めるとした場合、日本から派遣された査察官が、食肉処理場におけるSRM除去に限った場合でも、継続して、実情を的確に捉えられるのだろうか、と心配になる。
このブログですでに要旨を紹介し、食品と科学社(℡03-3291-2081FAX03-3233-04789)の「食品と科学」4月号にその詳細が掲載される、近畿大学大学院農学研究科米虫節夫教授の講演リポートには「牛肉輸入に関連して日本から派遣された調査官は、食肉処理場の作業員が唯一作業のよりどころとする標準作業手順書(SOP)を確認しているのか、現場監督のためのSSOP(衛生標準作業手順)を確認しているのか、更にその実施を監督点検する上級監督者用のチェックリストと実施記録の確認をしているのか、さらに、SRMの除去作業に必要な場所が確保されていることの確認をしているのか」と教授が現場を実際に見た目で、問題提起がされている。偉い人たちも是非読んでほしい。(猫西 一也)