アメリカ産牛肉の特定危険部位付着肉輸出事故の原因は
アメリカ産牛肉の特定危険部位付着肉輸出事故の原因は、検査官の単純ミスではなく、BSE対策プログラムに基づく検査官や関連企業に対するアメリカの教育訓練体制の不徹底が原因ではないか
日米間で約束された「BSE対策として危険部位は除去した肉を輸出する」という約束が破られ、日本が輸入禁止措置を取り、アメリカの高官が訪れ記者会見で、「食肉処理場における検査官の経験不足と単純ミスである」とか、「BSE対策プログラムを徹底する時間が少なすぎた」などと釈明しているのはご承知の通りである。
アメリカの食肉検査官の、教育歴・BSE対策プログラムの研修歴は?
アメリカの牛肉処理工場で背骨つきの肉に輸出合格のサインをした食肉検査官は危険特定部位を除去する必要性について、教えられもせず、学んでもいなかったのではないか。
教える義務はアメリカ農務省に、学び業務に反映させる義務は検査官にあるはずである。今回の事故の原因は単なるミスではなく、検査官や関連企業に対する教育訓練体制の不備であり、食肉輸出に関する日米協定を遵守のために行なうべきシステム構築や担当者教育といった基本的なことが、行なわれていなかったのではないか。
アメリカはHACCP先進国ではなかったのか?
疑問は更に広がる、アメリカは,危害分析を基に、食品の製造工程を適正に管理することで、商品の安全を保証するHACCPシステム先進国であり、食肉処理工場にもシステム導入を義務付けているのではないのか?
ならば、食肉処理工場における特定危険部位除去や、危険部位を持つ食肉やその作業者との交差汚染防止を含むSSOP(衛生標準作業手順)に基づき処理され、責任者による点検も行なわれ、記録もあるはずである。
もし、問題を起こした食肉処理工場が、HACCPシステムも導入せず特定危険部位除去のSSOPやそれに類するマニュアルも存在していなかったとすれば、単に食肉検査官のミスではなく、BSE対策プログラムを持たない食肉処理場に、日本への輸出を許可したアメリカの行政当局自身の責任なのではないか?
「スーパーへ行くまでの交通事故の確率よりBSEの危険率は低い」などと言った高官の発言を聞くと、何のために来日したのか、疑問が膨らむばかりである。
疑問は放置したままにしておくと、当然のことながら不信に変わることを銘記すべきである。(猫西一也)