[食中毒]ホテルの料理でノロウイルス食中毒
06年1月8日朝日新聞朝刊(13版)30頁に「天王寺都ホテル 84人食中毒症状 ノロウイルス検出」の見出しで、ホテルでの食中毒事件発生が報道されている。
内容を要約すると「大阪市は7日、昨年12月25日に阿倍野区松崎町1丁目の『天王寺都ホテル』のクリスマスダンスパーティで食事した84人が嘔吐や下痢などの食中毒症状を訴え、うち10人からノロウイルスが検出されたと発表した。(中略)パーティには大阪市や西宮市などのダンス教室会員ら約300人が出席ロースとビーフやサラダなどを食べたという。[以下略]
ノロウイルス食中毒は
今回発生したこのノロウイルス食中毒は、微量でもウイルスが料理の中に存在していると、これをたべた人達の内何人かが発症することになる。微量でも感染し発症するので、料理と食べていない人までが、調理した人の手や食器、患者の嘔吐物始末した人の手などを介して他の人へ感染する、つまり人から人への感染サイクルができる。
また、厄介なことに人が保菌者となって汚染を広げることがある、ノロウイルスに汚染された生の貝や料理を食べた人の便には、発病するしないに関わらずノロウイルスが含まれる。
その人の用便後の手洗いが不十分だと、その人の手は汚染源になる。
もしその人が調理人で、しかも発症していなかったら、自覚症状の無いまま、調理場内で汚染を広げてしまうことになる。
だから、「用便後と調理前と後、など、動作の区切り毎に必ず丁寧な手洗いをする習慣が大切!」なのである。
保菌者が汚染を広げる。患者の嘔吐物などの飛まつと共にウイルスが空気中に飛散する。といったようなことが重なると、部屋や調理室などの閉鎖空間全体が汚染地帯となり、他の共同生活施設全体に感染を広げてしまうことさえある。
一般的な細菌性食中毒は 微量感染でも発症する腸管出血性大腸菌O157を除き、サルモネラ属菌や腸炎ビブリオなど細菌性食中毒で感染型と呼ばれるものは、菌が食材や料理を汚染し菌が、例えば食品1グラム当たり100万あるいは1000万と増殖した料理を食べた結果発症する。
また、細菌性食中毒で毒素型と呼ばれる黄色ブドウ球菌による食中毒は、黄色ブドウ球菌で汚染された食品が細菌が増殖しやすい30℃前後に放置されている間に増殖し、その際生成された毒素『エンテロトキシン』(腸管毒)が食中毒の原因になる。
したがって、これ等の菌が増殖した食品を食べた人のみが発症し、通常人から人への感染は起きない。
予防法は
大量の菌の存在が原因となる細菌性食中毒の予防は、例えば弁当などは調理後少なくとも4時間以内にたべる、食材は10℃以下に冷蔵するといったことが予防策になる。
腸管出血性大腸菌O157の場合は微量感染でも発症するので予防策にはならない。野菜の場合は調理前洗浄と次亜塩素酸ナトリウムに殺菌の組み合わせか、総ての食材の加熱調理が予防策となる。
ウイルス性食中毒のノロウイルス食中毒は、例えば生カキの内臓部分にウイルスが存在していたとすれば、いかに新鮮であろうとも、冷蔵保存したものであろうと、生で食べれば発症する危険性は高い。酢で料理しても予防効果は期待できない。
生のカキを食べて食中毒した患者10人のうち7人は、原因物質がノロウイルスであるとも言われているので、今のところ、充分に加熱して食べるしか予防法はないようである。
予防に穴が!それは交差汚染
折角カキを加熱調理しても、加熱以前に生カキを調理したまな板などの調理用具や調理した人の手が、付け合せにする生野菜やハムなどを汚染しノロウイルス食中毒を起こすことが多いので注意が必要である。(このような汚染を交差汚染と呼ぶ)
家庭でも、生カキを扱った手や調理器具は、湯と洗剤でしっかり洗浄してゆすぎ、器具は熱湯消毒〔85℃以上の湯に2分間浸ける〕してから他の調理に使う。
手洗いと調理用具の使用区分で交差汚染防止
業務用の調理場では、手や調理器具の洗浄殺菌はもちろん、生カキなどを調理する用具や加熱用食材とサラダ用の生食用食材を扱う調理器具などは色分けし、保管場所も区分をして混用しないことである。
安全な生カキの保証は生カキは美味しいと思うし、安全に食べたいと思う、養殖場から、業務用の調理加工施設そして家庭まで一貫して食品衛生管理を行なうISO22000システムがフードチェーン全体の協力で行なわれることを期待したい。