[経営幹部への手紙]5改革推進のトップランナーは
CI・QC計画(以下CI)で病院再建 改革推進のトップランナーは
これまで、CIの内容を機関紙に発表し、標語とシンボルマークの募集を行ったことを書きました。
現場の皆さんは「何が始まるのだろうか?」と、好奇と期待の目でHOPITAL NEWSを読み、応募もしてくれたようでした。
しかし、病院全体でみると、皆さん日々の仕事に追われるだけ、言わばグラウンドを回周しているだけで、ロードに出て、病院再建を目標に集団で走りだそうかと意識する人達はいませんでした。
この段階で期待するのは無理!「あせらない、あせらない」と、はやる心を抑えました。
食品企業でも、機関紙等による啓発活動を始めたからといって、すぐさま現場の人たちが品質管理向上を目指して目立った動きを始めることは少ないでしょう。
改革の登り口は
私は薬剤師でもありましたので、薬局を改革の登り口に選びました。
薬局長以下5名の薬剤師はまじめで純情、ガラス窓に囲まれた職場の中で朝早くから忙しく調剤業務に励んでいました。しかし、病院全体から見ると、薬局は孤立した存在と感じました。
その原因は、職場の雰囲気が受け身で、医師、看護師、検査技師、理学療法士などへ日々情報発信をしていないので、太いパイプの人間関係が作れず、高い学歴の技術集団の割には評価されず、存在感も薄いことが分かってきました。
食品企業でも似たことが
ところで私は、病院再建を終えた後に、ある食品企業でHACCPシステム導入の仕事をしました。
その際、製造現場の人たちが「ヒンカン」と呼ぶ「品質管理室」についても病院の「薬局」に似ているな、と感じました。
その原因はやはり技術者達が“室”の中の仕事にのみ精出していることでした。
話し合いを重ね「検査室で動く技術者から製造現場を動かす技術者」に脱皮してもらいました。検査技術者のAさんは、HACCPチームの要であるマネージャーも務め、年を追って管理力をつけ、製造現場全体を動かしてくれるようになりました。
さて、薬局の話に戻ります、皆さん忙しくわき目もふらず働いているのですが、薬局長は大福帳のような薬剤仕入れ帳への記入や集計の事務に手をとられ、薬剤師は倉庫で目的の薬剤を探すのに時間を取られ、9社の薬卸会社との取引電話連絡や来局する担当者と、世間話も交えた長い応対に時間を費やしているなどが目につきました。しかも当事者がそれらを無駄と気づいていないことも分かってきました。
共に外の風に当たる
薬局長を伴い、大阪市内で開催された‘93年日本病院薬剤師会近畿学術大会に出席しました。
医療保険給付内容の改正で、薬剤師が患者に服薬指導をすると保険機関から給付が行われることになった時期でしたので、会場では、先進的な大学病院・国公立病院の薬剤師が?薬剤管理指導(服薬指導)料施設承認の経過報告。(*服薬指導で患者1人当たり600点加算) ?服薬指導の実践報告、薬歴管理・医薬情報管理の実務報告等をテーマに檀上で報告を行いました。【注】*その後900点加算に。
会場は熱気むんむんでした、しかし薬局長の顔色は冴えませんでした。後で話してくれたのですが、学術大会に出席し「俺は “井戸の蛙”ではないか!」と、大きなカルチャーショックを受けたようでした。
大会終了後近くの料理店でビールを傾け、その席で、「うちの病院も服薬指導病院の承認を取りませんか、次の学会では、貴方が壇上に立って発表してください、応援しますよ。」と提案しました。彼の顔に笑顔が戻り、目が輝いたのを憶えています。
承認取得には越えなければいけない、中小企業共通ともいえる大きな壁(?金がない?場所がない?人が増やせない)が病院にもありました、しかしそれを承知の上で、翌日から薬局長は“燃える男”になりました。私とペアを組み、トップランナーとしてロードへ走り出そうとしていました。(次号に続く)(猫西一也)