*[食品工場の衛生管理]№(25)給水による汚染
*[食品工場の衛生管理]№(25)給水による汚染
食品と科学 [食品企業の食品危害防止体制シリーズ]ダイジェスト
前号のあらまし
殺菌剤の濃度不足や測定機器不使用による殺菌不十分の原因と点検のポイント、
次亜塩素酸ナトリウムの保管状態、使用量や補充量記録と作業量を対比し不自然さがないか?
熱湯で殺菌作業をしている場合殺菌不十分の原因は何か、湯の温度保持と殺菌時間の確保する対策。
【注】レストランの湯の必要量については04年の食品と科学4月号『管理職が使いこなす4つの技能 その四』「食器洗浄に必要な湯の量」でも述べているので参照されたい。
今号は
給水による汚染
汚染された水による事故は
高架水槽から配水する際に行なう殺菌装置の故障(塩素剤注入不良)。が多い。
この原因の多くは、操業前に衛生管理者が殺菌装置の点検を行なっていないか、定期点検と清掃・補修が確実に行なわれていない場合である。
生産部と施設部、さらに業務委託業者との責任分担もあいまいで、内部コミュニケーションもうまくいっていない場合は次のような問題が起きる。
① 受水槽、高架水槽の清掃・補修が忘れられ、定期的に行なわれない。
② 業務委託業者が行なう点検清掃・補修などの監督や作業後の確認点検が行なわれない。
③ 端末蛇口から出る水の残留塩素測定がおろそかにされ、途中配管の老朽化や重量物の負荷による破損に気づかない。
④ 現場で端末検査が励行されていても、係員まかせか、委託したメンテナンス業者まかせになり、生産、施設両部の責任者は書類にハンコを押すだけと言った状態になりやすい。
前記のような問題点に注意するのと同時に、過去の記録データを基に危害発生を予測し、適切な処置をしているかを点検する。
例えば、正月や五月の連休、夏期休暇などによる休日明けの朝に、貯留水をそのまま使った場合などにしばしば問題が起きることがある。
長期休暇で工場施設を使わなかった後や、大掛かりな補修を行なった後の水をそのまま使った場合、にごり水が出るなど、予測しないトラブルが発生することがある。
コックを開けたしばらくの水は容器に溜め、外部洗浄水に使うなどの予防措置をすることが安全である。
家庭の水道水でも、配管が古く鉛などの金属管を使っている場合は朝一番の水はバケツに溜め飲用に使わないよう指導している都市もある。
番外「雑居ビルの生水は飲むな
「雑居ビルのバーなどの飲食店では水道の生水は飲まないほうが良いですよ」「飲むときはミネラルウォーターを注文することです。」と知り合いのビルメンテナンス技術者のA君がそっと教えてくれた。
「なぜ?」と聞くと、「一般に雑居ビルは、火災予防に限らず、受水槽、高架水槽の管理に対してもオーナーの関心は低く定期的な点検・清掃や補修が十分でない。」と硬い表情で答えた。
実演販売などで、雑居ビルに実演販売店を出店している場合は水質管理の確認をしておく必要がある。
A君に代わって問題提起しておく。
湯と洗剤をケチると清潔度は低下
食品工場や飲食店の清潔度を「洗浄作業のレベル」で判定すると、湯と洗剤を使って作業手順どおりの洗浄をしている施設は、設備や器具容器の細菌検査をするまでもなく清潔度は高い。水と洗剤を使っている施設がこれに次ぐ。水だけの施設は不潔の部類に入るものが多いと言える。
点検の際には、生産作業量に比較して「湯や洗剤の使用量は十分か」を見ることが重要である。
設備・器具・容器をケチると交差汚染が起きる
器具容器を原材料加工室と調理済み加工室に使用区分を明確にし、相互利用や兼用をしないこと。
使用区分を更に厳密にすると、原材料加工室では魚用、肉用、野菜用のまな板、包丁、容器が最低限必要になる。調理済み加工室では、魚用、肉用、野菜用に加えて生食サラダ用、ロースとビーフ用なども加わる。
これらの基本的な機材を揃え、「用具は兼用しない!」と教育訓練を徹底することで交差汚染は防止できる。
用具の使用区分が守られない原因の一つに、用度窓口担当者の対応の悪さがある。
生産現場から機材補充の伝票を上げても、「予算が無い」と “けちる”「急に言われても」と “勿体付ける ”「上の者に来させろ」と “いばる”「忙しいので」と “遅い”。
その原因の多くは、用度係の上司である管理部門責任者が現場を知らないか、機材補充に対する熱意が足りないことによる。上司の心が以心伝心で窓口担当者に伝わり、交差汚染原因の元を作っている。
点検者は、問題の問題はと突っ込んだ分析をし、経営者も巻き込んだ改善を行なう必要がある、さもないと点検そのものの意義が薄れる。
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(猫西 一也)