*[ISO]講演ISO22000の概要と規格理解のポイント抜粋・

講演リポート

 06年4月19日「食品安全ネットワーク第10回定期総会と記念講演会が大阪ガーデンパレスでおこなわれた。講演内容(その1)を食品と科学7月号リポート原稿として送付した。

内容の抜粋・要約を紹介する。

ISO22000の概要と規格理解のポイント
独立行政法人農林水産消費技術センター理事湯川 剛一郎氏
技術士・農業(食品化学)部門及び総合技術監理部門)

●日本は意見も述べ、投票もできるPメンバーとなり、農林水産消費技術センター(以下センター)が我が国の窓口となった。
 ISO22000は農林水産省が所管し、HACCPは、総合衛生管理製造過程(丸総)を所管する厚生労働省で、という説は誤り。
 センター内にあるISO22000国内検討委員会には、農林水産省厚生労働省が推薦する専門家が参加し、両省の担当官がオブザーバーとして参画している。●審議の発端となった2001年3月デンマークの提案内容からも、ISO22000はHACCPそのものであることが明確である。(以下ISOの表記を省略)

デンマークの提案理由は、
①国際貿易の場では、国家規格だけでは不十分で、生産者は国や顧客により中身の異なった要求事項に対応しなければならなくなっている。
②ばらばらな現状を是正し、正しいHACCPシステムに基づいたマネジメントシステムを確立するためには、新たな国際規格が必要である。

● 22000と9001の関係
 規格の構成は、9001と基本的に同じである、しかし、9001にある「顧客満足」項目が22000にはなく、22000には、全体が予防を目的にしているため「予防処置」に対応する項目は無い。

● 22000の概要
序文で22000では、「フードチェーンすべての組織」を対象にし、次の四点を重視している。
①相互コミュニケーション。②システムのマネジメント。③前提条件プログラム。④HACCP原則の要素を組み合わせた食品安全マネジメントシステム(FSMS)の要求事項を規定。
22000の重要な特徴は「管理手段の妥当性の確認」を行った後の工程が「HACCPプランの作成」と「オペレーションPRPの確立」の二股に分かれていることである。

● 22000は、FSMSを確立してもらうためのマニュアルであり、単に、認証取得のためのチェックリストではない。
●食品生産も飼養衛生管理基準(GAP)実施が前提になる。
●.22000らしい事項は第7章と8章である、9001とHACCPの合体は7章で行われている。
第7章で組織は、ハザード分析を行う間に、PRP、オペレーションPRP及びHACCPプランの組み合わせによってハザード管理を確実にするために用いられるべき戦略を決定する。第7章は、基本的にはCodexによるHACCPの原則及び導入の手順に沿っている。

●HACCPで規定されている7原則12手順が22000の要求事項になっており「22000はHACCPそのもの」ということが理解されると思う。
●HACCPの7原則12手順との違いは、「4.44管理手段の選択及び判定」の次の段階が「7.5 オペレーション前提条件(OPRP)プログラムの確立」と「7.6HACCPプランの作成」の二股に分かれ管理手段として、OPRPで行うのか、CCPで行うのか、又はこの二つを組み合わせで行うのかを決定すること、さらに管理手段の妥当性を確認することを求めていることである。

●ハザード分析(ハザード評価及び管理手段の選択・評価)
 すべての食品安全ハザードを明確化。最終製品許容水準決定。健康への悪影響の評価。食品ハザードの予防、除去のための管理手段の組み合わせ決定。OPRP又はHACCPプランのいずれかで管理するかを分類する。HACCPリーダーにはハザード分析の実施能力が必要。

●管理手段の分類の基準
重要さは変わらないが、モニタリング結果、即時の修正が可能であればCCPに、即時の修正ができなければOPRPで管理する。
従って「許容限界を逸脱した場合にとるべき修正及び是正処置」の記述以外の項目では、CCPとOPRPに関する記述はほぼ同じである。

● トレーサビリティシステム
製品ロット及びその原料のバッチ、加工及び出荷記録との関係を特定できるトレーサビリティは、直接の供給者から納入される材料及び最終製品の最初の配送経路を明確にできればよい。
●  不適合の管理
CCPで、許容限界(CL)を逸脱した条件下で製造された製品は、即、フードチェーンに入ることを防止する処置を講じる。
OPRPが適合していない条件下で製造された製品は、評価を行い、必要な場合、フードチェーンに入ることを防止する処置を講じる。
●  回収
回収で事故を防止できればシステムは維持されているという考え方であり、タイムリーな回収を可能にする文書化された手順。利害関係者への通知、影響を受けた製品ロットの取扱いなど、とるべき1連の処置。プログラムの有効性検証し記録する。
 失敗しにくくする,失敗してもすぐ回収することで、被害の拡大を防止する」というものである。
●中小企業への配慮
適用除外といった規定はない。ただ、外部技術者の力を借りて、食品ハザードの分析をすることは認められている。
●第三者認証の仕組みの構築
n 「食品安全マネジメントに係る認定・審査登録制度の開発委員会」を設置し、検討を進めている。
●財団法人食品産業センターでは、「日本食品安全マネジメントシステム評価登録機関(JFARB)」を創設した。
●おわりに
この規格は、認証を取得した組織の作る食品が絶対安全であることを保証するものではない。
 この規格は、システムの失敗が起こりにくい組織づくりを目指している。
また、万一、安全でない恐れのある食品を市場に流通させてしまったとしても、すぐ回収を行える体制が整っており、原因究明が的確に行われ、再発防止策が講じられるような〜転びにくく、転んでも、すぐ立ち上がれる〜組織を目指している。

 22000への適合性を説明しようとする場合には、文書化手順、記録の有無といった要求事項への適合性の確認のほか、ハザード分析から管理手段の選択、組合せの決定に至る一連の検討過程を合理的に説明できることが求められる。
つまり、自分が行っている管理手段が正しいのかどうか、説明できることが求められている。

詳細は食品と科学7月号で

1時間におよぶ講演は充実した内容で、食品企業の指標になると思います。
リポートも、字数1万字と図表4枚に及びました。食品と科学7月号の本文を読んでいただければ幸いです。
(8月号では社団法人日本食品衛生協会小久保弥太郎氏の「総合衛生管理製造過程承認制度&ISO22000」
9月号では、財団法人食品産業センター環境システム部長大西吉久氏「ISO22000の普及について」の講演内容と総括質疑応答内容をリポートします)。(猫西 一也)


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