[表示]シンポジュウム「食の安全と信頼できる食品表示を目指して」
2006年2月15日〈水〉13時から16時まで、神戸大学百年記念六甲ホールで、独立法人農林水産消費技術センター神戸センターが主催し、近畿農政局・兵庫県・神戸市が後援する「食の安全と信頼できる食品表示を目指して」を主題とするシンポジュウムが開催された。
シンポジュウムは次のプログラムで行われた。
挨拶;中村千春神戸大学農学部長
基調講演
「牛肉の偽装表示を防ぐDNA技術開発」
神戸大学大学院自然科学科研究科助教授、農学博士 万年英之(まんねん ひでゆき)
「食品表示確認等のための分析」
独立法人農林水産技術センター神戸センター所長 川村和彦(かわむら かずひこ)
〔神戸大学農学研究科修士〕
パネルディスカッション
コーディネーター
神戸大学大学院教授、獣医学博士、農学博士 大澤 朗(おおさわ ろう)
パネリスト
伊藤 潤子(いとう じゅんこ)コープ神戸理事
石郷岡 隆(いしごうおか たかし)フジッコ㈱品質保証部長
児玉 充弘(こだま みつひろ)JA兵庫六甲営農経済事業部営農相談員
大東 幹男(おおひがし みきお)神戸市食品衛生検査所長
講演内容要旨
「牛肉の偽装表示を防ぐDNA技術開発」研究成果は情熱と年月と膨大な実験のΣ
学者が到達した専門領域まで知り得ないのは当然だが、万年助教授が「プライマリーセット2.500以上を検索(これだけで2年かかりました)「これはAFLPバンド100万本以上に相当」つまり100万箇所以上のDNA領域を調べたことになる」と、いった長い年月をかけた膨大な実験とデータの積み上げがあったことを述べた、短い発表時間の裏にあることを知り、講演の重みをずしりと感じた。
日本の牛肉消費における生産国割合
日本 42%
オーストラリア 27%
アメリカ 27%
ニュージーランド 2%
その他 1%
牛肉偽装が行われる背景
日本の肉市場は大衆牛肉を提供するホルスタイン種と高級牛肉を提供する黒毛和種と外国産輸入牛肉の三者が、肉質、価格の両面で競合している。
この中で、交配によるホルスタイン種の肉質向上の研究が進み、黒毛和種とホルスタイン種が交配して生まれた雑種第1代(F1と呼ばれる)の牛が、外見は黒毛和種と類似し、肉質も黒毛和種に近いことが発見された。
この肉が、交雑種として販売されれば問題は無いのだが、黒毛和牛肉と偽装表示される可能性が高いこと、偽装されるタイミングは枝肉から精肉になる過程でおこなわれる確立が高いことも認められた。
2年間の年月をかけた「「プライマリーセット2.500以上を検索、100万箇所以上のDNA領域を調べるといった、膨大な実験とデータの積み上げ「AFLP法を用いた品種鑑別法を確立した過程が報告された。
黒毛和種とF1の鑑定では、6つのマーカーが品種鑑定に有効であること、黒毛和種とホルスタイン種の鑑別では4つのマーカーが品種鑑定に有効であるこおとを発見したことが述べられた。
今後のDNA鑑定技術開発
国内産牛の品種鑑定、国内産牛と輸入肉―オーストラリア産牛・アメリカ産牛―、美味しい牛肉を見分けるDNA鑑定法であり、研究が進んでおり、特許申請も近いこと。
鑑定技術開発が牛肉偽装防止効果を
万年助教授は、「牛肉鑑定技術開発の進歩が、牛肉を偽装しようと考える人を減少させる抑止効果を果たしていること、また、黒毛和牛の価格統計資料などから推測される」とも述べた。
一消費者としても、感謝と敬意の気持ちで講演を聴いた。
(以下の講演内容は、改めてこのブログで報告する。) 〈猫西 一也〉