[HACCP]抜き取り検査からプロセス管理へ回帰を
最近、食品企業から食品検査機関へ、寄生虫検査の依頼が増えているという。
中国政府が韓国産キムチに寄生虫卵が検出されたと発表、韓国政府も中国産キムチから寄生虫卵が検出されたと発表、両国の面子をかけた情報合戦的様相を呈した。
更に韓国政府が国内産キムチからも寄生虫卵が検出されたと報道した。
これ等の結果が検査依頼増につながっているのであろう。
また、日本への韓国産キムチの輸出が50%も減少したので、韓国内のキムチ輸出業者は大きな打撃を受けているようで、業界団体名で政府に損害賠償の訴訟を起こしたことが、今日の朝日新聞朝刊に報道されていた。
検査機関へ寄生虫の検査を依頼している企業は、キムチを中国や韓国から輸入している企業であろう。
検査を依頼した目的は、輸入した在庫品に寄生虫卵が付着していないか確かめることであろう。その裏には「もし『検出しない』という結果が得られたら、当社の輸入品は『心配ありません』とか『安心です』といった広報をするつもりではないだろうか。
だとすると、これは大きな考え違いをしていることになる。
宇宙食の安全システムを開発する段階で生まれたHACCPシステムは、マネジメント面で補強されISO22000として統合され、05年9月から世界基準として実施段階に入っている。
その原点となったHACCPシステムの出発点は、「抜き取り検査は、問題発見の端緒として意味があるものの、抜き取り検査した母集団の品質を保証するものではない」という考え方であり、原材料から製品まで、すべての工程毎に点検と管理を行ない、プロセスで安全を保証しようとするものである。
この考え方でキムチの品質保証を考えると、まず、第一の工程として、キムチの材料となる白菜などの野菜がどのように栽培栽培されているかを点検することになる。
もし、肥料に人糞を生肥として使っているのであれば、製品を検査するまでも無く寄生虫卵の混入は避けられないであろう。
次は、畑から工場までの運搬状況(容器や取り扱い)、受け入れ洗浄の状態、工場での漬け込み作業や製品容器へ充填中に人から寄生虫汚染が無いか衛生管理状態のを点検する必要がある。大まかに工程点検を行なっても以上のようになる。
これ等の工程毎に、顕微鏡的検査も加えた点検を行い、すべてが衛生的と判定されて、初めて安全ですと宣言できる。更には、消費者に状況を公開することも必要であろう。
抜き取り検査結果だけで、非難し合ったり、安心ですと宣伝したりする時代は終わっていることを知るべきである。(猫西一也)